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心がキュッとなる話

星になった息子を見てほしい--。札幌市中央区で建材メーカーを営む長尾正次さん(64)、敏子さん(64)夫婦が1000万円以上する本格的なドーム付き天体望遠鏡を、小型ロケット開発などに取り組む「植松電機」(北海道赤平市)に寄贈した。この望遠鏡は、22年前に事故死した長男正美さん(当時18歳)を星にだぶらせ、夜空を観測しようと購入した。夫婦は「多くの人が自然の雄大さに感動してくれれば息子も喜ぶ」と話している。
 正美さんは小さいころから星に魅せられ、天文少年になった。ところが、大学進学を目前にした84年3月、交通事故に遭い、死去した。
 



正美さんの死後、敏子さんは「息子はなぜ星が好きになったのか」と自問自答し、自然科学に興味を持つようになった。そして90年代半ばに口径40センチもある望遠鏡を購入。観測しやすいようCCDカメラなどの付属品をそろえ、投じたお金は1000万円を超えた。
 夫婦は折に触れて夜空に輝く星に正美さんの姿を追った。だが、札幌周辺では近年、光害(ひかりがい)が深刻化して夜空が見えにくくなった。さらに年を重ねるにつれて、望遠鏡を設置した自宅屋上に上がるのもつらくなった。「私たちが見てきた星を若い人にも見てほしい」。そう思うようになり、アマチュア天文家や北海道大の関係者を通し、電磁石や宇宙開発の分野で全国的に知られる植松電機に話が持ち込まれた。望遠鏡は先週、同社に運ばれ、設置後には市民に開放して観望会を開く。
 植松努専務(39)は「理想と夢を膨らませ、命の重さを考える契機にしたい」と賛同。天文教育に詳しい名古屋市科学館の毛利勝廣学芸員は「これほど本格的な望遠鏡の寄贈は聞いたことがない。提供者の思いがあるだけに、望遠鏡を核に交流の輪が広がるのではないか」と話している。
【田中泰義】
(毎日新聞)
by jaguar.takahashi | 2006-07-12 21:30 | 個人的見解
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